[ライバル]




 そんな数年ぶりの二郎との運命の再会を果たした数日後、なんと彼の方から「明日て暇?」との連絡がきたのです。

やった!デートの誘いだ!今度は映画かな?遊園地かな?

期待に胸を膨らませたのもつかの間、この後彼の言い放った言葉に私は耳を疑いました。


 


 「二郎いこうよ。おまえまた食べたいって言ってたじゃん。




ん?じろ…え?じろう…、え??


 


二郎て、あの二郎さんですか?いやいやいやwこの間食べたばっかやん。そんでワシ食えんかったやんそれ。合わせて無理やりおいしいゆーたわけやんか。


 


内心そんなことを思いつつも、意中の彼からの大事な誘いを断れるわけもなく、私は再び彼と二郎へと行くことになりました


  約束の日、府中駅集合。向かったのはラーメン二郎府中店なんだかもう目的が明確すぎて逆にすがすがしいぐらいだ。ほらもっと他に映画とか、映画とか映画とか映画とかあるじゃないか!デートってそーゆうもんじゃないのか?


しかしそこまで彼を夢中にさせる二郎てなんなんだ!!


  


 二郎さえ、あいつさえいなければ!!


 


私は完全に二郎に嫉妬していた。二郎を恨みもした。だけど、それでも私にとっては、この駅から二郎までのたった数分の道のりが、彼との大切なデートだった。


 このまま二郎が一生現れませんように…店がなくなってますように…そんな乙女の祈りもむなしく、あっという間に私の恋のライバルラーメン二郎府中店に到着してしまった。まるで彼が来るのを待ち構えていたかのように黄色く色付く看板。いやまて、彼だけではない!店内を覗くと、他にもたくさんの男たちが何かにとり憑かれたかのように


一心不乱に二郎を食べているじゃないか!それはそう簡単には女を寄せ付けない異様な光景だ。しかしこの日の私はいつもとはちょっと違うのだ!なぜならば、この日あらかじめ二郎を食べるとわかっていた私は前日の夜から食を減らし、もちろん朝ごはんも食べていなかったのだ


 「彼の大好きな二郎を食べきってしまえば、彼は私だけを見てくれるはず!私を好きになってくれるはず!」


 この時は本気でそう思っていたのです。この日のために胃の調子を整え準備をしてきたんだ!さぁ、決戦間近!ついにライバル二郎が目の前に現れ、戦いのゴングが鳴った。カーン!


 私はどーにかして二郎を残さず食べきらなくてはと必死で、とにかく無心で麺を流し込んだ。掘っても掘っても溢れ出てくる麺。あれ、逆に増えてる?とさえ思わせる魔法の麺!


 


メーン!!


 


そして数分後。


カンカンカンカーン!


試合終了のゴングが鳴った。


なんと、私はこの店で、


 


 


初めて二郎を完食した


 


WINNER挑戦者SUZUKI!


 


 


しばらく放心状態の私。


 


ハっ!あの男の、漢の食い物二郎を私は完食したんだ!!


尋常じゃない満足感だった。正直一瞬彼のことを忘れていたぐらい。この時それどころでない達成感があったのです。


 


 


彼「おお食えたじゃん。すげーな!」 


    (ちゃんと食べて偉いな。好きだよ!)


 


彼の、いや、天使の声が聞こえた。脳内変換機能の調子も良いようだ。天にも昇る気分だった。戦いは終わった。私は、恋のライバル、二郎に勝ったんだ!!もうここには用はない!!いつもよりも堂々と胸を張って店をでる私がいた。


  再び彼と二人きり、府中駅までの短いデートが始まる。告白されたらどうしよう…胸のドキドキと油のギトギトで今にも胃が爆発しそうだった。と次の瞬間、彼がなにやら外国語らしき謎の言葉を話し始めた。


 


 「俺の彼女さ。二郎誘っても嫌だってゆーんだよねー。小食だからさあいつ。」

 


 (*´∀`*)?


 


 


んー(*´∀`*)?


 


 


なんてー(*´∀`*)?


 


 


カノジョてー(*´∀`*)? 


 


 


なにそれ美味いのー(*´∀`*)?


 


 彼が何を言っているのかしばらく理解できませんでしたが、「カノジョ」という部分だけはしっかり聞き取ることができました。 


 


彼女おるんかーい(*´∀`*)!!


 


さらに止めを刺すかのように彼は言った。


 


 「今度彼女府中店に連れてってみるわー」


 


 


  違う!それは違うよ!!府中店だから完食できたわけじゃないよ!!量が少ないとかそーゆうことじゃないよ!私は前日から準備してたんだよ!だから食べれたの!ねぇ!わかってよ私の気持ち…。私の恋心に気付いてほしい!てゆーか二郎を完食するまでのこの努力を認めてほしい!苦しい。この苦しさは二郎を完食した苦しさなのか失恋の苦しさなのかもはやわからないけれど胃も胸もお腹ももうなんか全体的に内臓が苦しい! 




もういらない。

もう食べない。

もう会わない。


ありがとう。

さようなら。


 


恋のライバルだと思い込んでいた二郎。けれどライバルは他にいたのだった。こうして、私の恋は二郎を完食し終わりを迎えた。恋の終りを告げるゴングが府中駅のホームに鳴り響く。カーン。


 


 


忘れてしまいたい苦い恋の思い出ではありますが、この時二郎を完食したことで得た尋常じゃない満足感、そして大好きな彼を忘れるほどの達成感を私は一生忘れることができません。そして今となってみれば、実はこれが二郎との恋の芽生えであったのではないかと密かに思っているのです。


 


まだ続く…


 


 


 


ツイッターへはこちらから


   ↓    ↓